はじめに
2024年に発生した令和コメ騒動は、猛暑やインバウンド需要の影響を受けたが、根本的な要因は1970年から継続されている減反政策(生産調整)にあった。本記事では、この問題を深掘りし、政策の課題と今後の展望について解説する。
記事要約(200字)
令和コメ騒動の背景には、減反政策による供給制限があり、市場の柔軟性を損ねていた。猛暑による精米歩留まりの低下が供給減少の直接要因となり、インバウンド消費増加と相まって価格高騰を招いた。農林水産省の需要推計には問題があり、供給不足を過小評価した可能性がある。また、25年産米の生産量を24年と同じ水準に据え置いたため、米価の高止まりが続くと予想される。公的な卸売市場が存在せず、価格がJA農協と卸売業者間の相対取引で決定される点も、価格変動の要因である。
3つのポイント
① 農林水産省の需要推計の問題点
農林水産省は、需要が11万トン増加したと推計したが、供給減少の影響を十分に考慮していない。通常、消費量は「生産量+前期末在庫-当期末在庫」の式で算出されるが、この方法では供給が減少すると消費量も減少するため、実際の需要増加を正確に把握できない。猛暑による供給減少を考慮すれば、11万トンの需要増加は過大な推計と考えられる。
② 25年産米の生産量決定と米価の高止まり
農林水産省は、25年産米の生産量を24年と同じ水準に据え置いた。この決定は、米価の高止まりを招く可能性が高い。2023年産米の異常な在庫減少により、24年産米の供給が逼迫し、価格が上昇した。25年産米の生産量が増えなければ、25年10月以降も米価は高水準を維持すると予想される。市場の価格調整機能が十分に機能していないことも、長期的な米価高騰の一因となる。
③ コメ市場の特殊性と政府の矛盾した政策
コメ市場には公的な卸売市場がなく、JA農協と卸売業者間の相対取引で価格が決まる。そのため、価格形成が不透明になりやすく、市場の需給バランスを正確に反映しにくい。また、政府は医療には財政負担を行い安価に提供する一方で、コメには減反補助金を支給し供給を制限するという逆の政策を実施している。この矛盾した政策は、消費者の負担増加を招き、コメ市場の歪みを助長している。
行動方針
- 減反政策の廃止・見直し:国内生産量の増加を促し、需給調整の柔軟性を確保する。
- コメ市場の透明性向上:公的な卸売市場を整備し、市場価格を需給に応じた適正水準に誘導する。
- 農業政策の一貫性確保:減反補助金制度を見直し、消費者負担の軽減と持続可能な農業支援を実施する。
まとめ
令和コメ騒動の背景には、減反政策の影響による供給制約と市場の非効率性があった。農林水産省の需要推計には疑問があり、25年産米の生産量据え置きは今後の米価高騰を招く可能性が高い。市場の透明性向上と政策の一貫性確保が求められている。
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