はじめに
2024年の春季賃上げはバブル期以来の高水準を記録しましたが、その内実を見ると、若手・中堅層の賃金が上昇する一方で、中高年層の賃金は伸び悩む傾向が見られました。 また、大企業と中小企業の労働分配率には顕著な差があり、特に価格転嫁の問題が課題となっています。本記事では、2025年春闘を迎えるにあたり、実質賃金の向上に必要な政策、企業間の調整、産業・エネルギー構造改革の必要性について解説します。
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記事要約(200字)
2024年の春季賃上げ率は高水準となったが、賃上げの恩恵は若手・中堅層に集中し、中高年層の賃金は停滞している。また、大企業の労働分配率は低下する一方、中小企業では高止まりし、価格転嫁の問題が浮き彫りになった。 実質賃金の持続的な向上には、生産性向上、適正な労働分配率の維持、交易条件の改善が不可欠であり、「定期昇給分+望ましいインフレ率+生産性向上トレンド」で算出される5%程度の賃上げが望ましいとされる。
2024年春闘の分析と若年層賃上げの実態
若手・中堅層の賃金増加と中高年層の停滞
- 2024年の春季賃上げでは、若手・中堅層の賃金が上昇する一方で、中高年層の賃金は伸び悩んでいる。
- 背景には、企業の人材確保戦略や、成果主義の導入がある。
- 厚生労働省の調査では、若年層(20代)の所定内給与が5%以上増加した一方、50代前半の給与は横ばいか微減。
賃金構造の変化
- 成果主義的な評価制度の拡大により、年功序列型の昇給が崩れつつある。
- 転職市場では若手・中堅層の賃金が上昇傾向にあり、新卒初任給も引き上げられる動きが加速。
- 企業は生産性向上と賃金制度改革の両立が求められる。
労働分配率の企業規模別格差と価格転嫁の必要性
労働分配率の動向
- 大企業では労働分配率が低下している一方、中小企業では高止まりの状態。
- 大企業は固定費比率が低く、利益率を維持しやすいが、中小企業は価格転嫁が難しく、収益圧迫の要因に。
価格転嫁の問題
- 日銀短観によると、中小企業はコスト上昇を販売価格に反映しにくい状況。
- 大企業が取引先の中小企業の価格転嫁を受け入れ、サプライチェーン全体の適正化を進めることが不可欠。
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行動方針
- 若年層の賃金上昇を支えつつ、中高年層の処遇改善策を検討
- 大企業の労働分配率を適正化し、中小企業の価格転嫁を支援
- 特定最低賃金制度を活用し、地域・産業ごとの人材確保策を強化
- 産業・エネルギー構造転換を促進し、交易条件を改善
- 新しい春闘の仕組みを導入し、賃金・物価の好循環を目指す
まとめ
2025年春闘では、単なる賃上げ率の引き上げではなく、賃金構造の変革、企業間の価格転嫁適正化、交易条件の改善が鍵を握ります。特定最低賃金制度の活用や、新たな春闘の枠組みを活かし、持続可能な実質賃金向上のための総合的な改革が求められています。
参考資料・参照URL
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